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売れっ子構成作家 矢野了平が考える「謎解き力」とは?

2019年5月15日

「謎解き力」とはなんでしょうか。謎検では「たくさんの“解”の可能性を思いつける力」と考えてますが、それは1つの側面でしかありません。これまでの謎検で好成績を叩き出し、仕事や学業の面でも活躍されているトップランナーの方々に、謎解き力の本質、その応用の仕方を伺いました。

第2弾は、過去開催の全ての謎検に参加し、いずれも好成績を収めた矢野了平さん。「水曜日のダウンタウン」「今夜はナゾトレ」「くりぃむクイズ ミラクル9」など人気番組の構成作家を務めている。良質なパズルのように作り込まれた企画を生み出し続ける矢野さんが考える「謎解き力」とは?

矢野了平さん

■キッカケは幼稚園の親友

―― 矢野さんはどうして謎解きに興味を持たれたんですか

幼稚園で親友だったタカマツくんという子とやっていた「宝探しゲーム」の影響です。そのゲームでは、まず最初にタカマツくんから紙を渡されるんですが、そこには例えば「じぶんでころがるくるま」と書いてある。これは、自転車が置いてある場所に行け、という指示なんですね(自転車=自分で転がる車)。で、そこに行ったらまた別の紙があって、次の謎が書いてある。それを繰り返して、最終的に宝を見つけるというゲームなのですが、それが本当に楽しくて。タカマツくんの仕掛けは、まさに今でいう謎解きゲームそのものだったんですね。だから僕のほうもそれを真似して、謎をつくって遊ぶようになりました。

―― クイズでは早い段階から活躍されていたとか

親父がテレビのクイズ番組を見るのが好きだったので、子どもの頃はいつも親父の膝の上で一緒に見ていたんですね。それで自然とクイズが好きになり、中学・高校でラジオのクイズ番組に出たり、クイズ研究会をつくったり、早押しの練習をしたり、とのめり込んでいったんです。

ただ、周りのクイズ仲間が知識や早押し技術といった「クイズに勝つ力」を磨いていく中で、僕は「『アメリカ横断ウルトラクイズ』のシステムをどうやったら真似できるか」「大会を面白くするためにはどういう演出がいいか」などを考える方面にも興味が出てきて。それで、暗号早解きゲームみたいなリアルのイベントをよく主催するようになりました。「上野を舞台に3人1組でチームを組んで暗号を解いていくイベント」とかですね。


■神が降りてくるまで諦めずに粘る

―― 謎解き力を磨くにはどうしたらいいのでしょうか

謎解きを最近はじめたという方は、謎検の問題集をいっぱいやったり、いろいろな種類の謎解きに挑戦したり、とにかく一気に経験値を上げるようにしましょう。問題のパターンを身体に吸収させるのが一番いいと思います。

―― 矢野さんの場合もそうだったんですか

僕はちょっと特殊なんですよ。謎解きが今のようなブームになる前に、『脳内エステ IQサプリ』というテレビ番組の問題を4年間つくっていたので。仕事でいろいろなパターンの問題をつくっていれば、例えば「漢字としても読めるカタカナはアレとアレと…」みたいな感じで、頭の中に引き出しができるんです。子どもの頃から謎解きをやっていたという経験もありますしね。

―― では、これまでに見たことがない謎の場合、つまり「今までのパターンに当てはまらない謎」の場合はどう解いているのでしょうか?

謎解きの謎は、考古学の謎とは違ってどこかに手がかりがあるじゃないですか。だから、もう1回資料を見直してみたり、会場をもう1回見渡したり、とにかく「謎が解けないのは何かを見落としているはずだ」という考え方でぶつかっています。

あと、僕は頭の中で考えを組み立てるというのが実は苦手なので、けっこう泥くさいアプローチもしています。例えば前回の謎検でサイコロの問題がありましたが、あのときは、頭の中で考えるだけでなく、実際のサイコロをつくって解いたんです。時間内に多くの問題を解かなければいけないような場合は、わかる問題はなるべく早く解くことで時間を稼ぎ、わからない問題を時間と根性で解いていく感じです。

―― 謎を解くには忍耐力なども大事になりそうですね。

というより、謎を解くのもつくるのも、基本的には忍耐力ですよ。どれくらい粘れるかが大事だと思うんです。

謎を解くときの場合、普通に「じっくり粘って考える」というのは限界がきますよね。集中力も切れちゃうし。ただ、それでも「手がかりは必ずある」と諦めず、考え続けたり粘り続けたりができるかどうかだと思います。

謎や問題をつくるときも同じです。パッとひらめくときもありますが、ひらめかないときも当然多い。そういう場合は、何かとっかかりが見つかるまで、ずーっと「漢和辞典」をめくるとかしています。ああいうのって、ずっと見ていたらだんだん変な風に見えてくるときあるじゃないですか。例えば「命」という漢字なら、上部だけがアルファベットの「A」に見えてきちゃうとか。でも下部は「叩」のままに見えてるから、その上下をくっつけると「冒険中に命を得るために勇者が取った行動は?」「A、叩く。B、守る。」みたいな問題ができちゃう、とか。

結局のところ、「神が降りてくるまで諦めずに粘る」みたいな部分が大切になるのかもしれませんね。


■日常生活というストーリーでひらめいてこそ謎解き力

―― 最後に、矢野さんにとって謎解き力とはなんでしょうか。

なんでしょうね・・・・・・。パズル的な問題を次々と解いていく力というのも確かに謎解き力ではあると思うんですが・・・・・・。僕が思う謎解き力はそうではなく、意外と誰もが持っているというか、秘めている力ではないかと思います。

リアル脱出ゲームでは、小謎の部分は経験者がどんどん解いていくんですけど、大謎の部分は逆にゲームに慣れていない人が、フッと重要なポイントに気づいたりしますよね。日常生活でいうと、例えば「あれ、ちょっと最近彼氏が怪しい」と思って詰めたら「やっぱり浮気してた!」みたいなシチュエーションと一緒です。僕は、こういう説明のつかないひらめき的な力こそが、謎解き力ではないかと思っています。

また、イベントとしての魅力については、SCRAPの加藤さんはこんな風に仰っていました。「リアル脱出ゲームって、謎解きこそが唯一無二の魅力のイベントみたいに思われがちですが、本当は謎そのものではなく、ストーリーこそが最大の魅力なんです。イベントが進行していく中で、自分がチームのみんなのヒーロー、アイドルになれる。そんなストーリーを体感できる手法として、たまたま上手くはまった手法が「謎解き」だったんです」

僕はこの話に、すごく共感できました。ストーリーというのは、リアル脱出ゲームのストーリーに限らず、ロールプレイングゲームのストーリーもあれば、日常生活というストーリーもあると思います。日常生活におけるストーリーというのは、「あれ、こうしたらもっと安く買えるんじゃないか」とか「おや、今日こういう条件が重なっているから、この道は混むんじゃないか」みたいな、ちょっとしたことです。だからこそ、ひらめきで問題を解決したり、生活を少し便利にできたりする人というのは、謎解き力がある人だと思います。


聞き手:石塚 健朗(SCRAP)

学生時代よりベンチャーキャピタルでスタートアップや大手企業の新規事業創出支援。新卒で面白法人カヤックに入社し、新規事業開発やクライアントワークのディレクターを担当。SCRAPでは、謎検含め新規事業開発のプロデューサーとして従事。@Takeroishi

執筆・構成:砂流 恵介

1983年、広島県生まれ。秋葉原でPCショップ販売員の経験を得て、日本エイサーへ入社。宣伝・広報を担当する。2013年12月退社。 手段を選ばないゲリラ的なPRを得意とする。現在は、BtoC企業を中心にPR業務やコンサルタント、WEBメディアでライター、ゲーム実況配信など、多方面で活動している。@nagare0313